2021年11月24日水曜日

「コーパスと言語変異研究会」2021年度 研究大会開催と発表募集

「コーパスと言語変異研究会」は2021年度の研究会を以下の通り開催予定です。

日時:2022年2月26日 (土) 10:00から13:00まで
方法:Zoomによるオンラインと対面によるハイブリッド
対面の場所:関西学院大学丸の内キャンパス(予定)


募集概要(既にコーパス学会メーリングリストで配信するものと同じです)
広い意味での言語変異に関わる現象をコーパスにより調査する研究の発表を募集します。発表時間は20分、質疑応答10分です。なお、発表はオンライン参加でも可能です。

今回の研究会はコロナが収束しつつあるとはいえ、まだ不確実な状況を踏まえ、Zoomによるオンラインと対面によるハイブリッド開催とします。ただし、コロナの状況によっては、オンラインのみになる可能性もあります。

発表希望の方はまずはSIG宛(コーパス学会メーリングリストでお知らせしたメールアドレス)に12月25日までに、件名「発表希望」で、メールで仮タイトルと簡単な内容をお知らせください。

発表要旨は
  締め切り:2021年1月20日(木)
  宛先:(コーパス学会メーリングリストでお知らせしたメールアドレス)
  件名: SIG研究発表申し込み
  お知らせいただく内容: 氏名・所属。発表要旨はワードの添付ファイル。
     書式はワードのデフォールト。400−600字で、参考文献については任意。




研究会参加(オンライン・対面)希望の方には、コーパス学会メイリングリストとこのブログにて、1月末に参加申請の方法をお知らせします。
オンライン参加希望のご連絡をいただいたみなさまには、Zoom会議 URLを2月半ばに配信します。また、対面での参加を希望の方々には2022年1月末に希望のフォームのURLをお知らせします(建物のセキュリティのため、事前に申請が必要となります)。

以上

2021年2月16日火曜日

2020年度研究大会発表要旨 (2021年3月27日(土))

  発表要旨(コーパスと言語変異研究会、2020年度研究会 2021年3月27日)

1. 知覚動詞補文に出現する準動詞がもつアスペクト特性の発現時期について
                                                                        村岡 宗一郎(日本大学大学院)


 PDE において、知覚動詞は過去分詞を除いて原形不定詞と現在分詞を補文にとる。このうち、原形不定詞は完結性を表す一方で、現在分詞は非完結性を表すという(cf. 江川(19913: 333))。知覚動詞補文の準動詞について、Stewart(1976: 36)は OE から ModE における補文内部の準動詞には意味的曖昧性があると述べ、また英訳聖書を用いて分析を行った盛田(2007: 153)は準動詞間に見られる意味的差異は EModE 以降見られるという。しかし、EEBO を用いて調査を行ったところ、EModE においては(1)のような 例が確認されたが、(2)の Kirsner and Thompson(1976)によれば、PDE においてこのような例は容認されないという。


(1)a. thus Iacob the sonne of isaac sawe a ladder stand vpon the earth,    (1582. EEEO)
   b. whensoeuer wee see the church stand in neede of our helpe,    1583. EEBO)

(2)a. I saw Bill {leaning/lean} against the side of the house.    (Kirsner and Thompson(1976: 220))
   b. I saw the ladder {leaning/*lean} against the side of the house.    (ibid.)


吉良(2018: 192-193)によれば、原形不定詞補文は完結を表し、自発的移動や自発的変化が認められるという。そのため、補文主語が有性である場合には、原形不定詞と現在分詞のどちらも用いられる。しかし無生物主語の場合には自発性が認められず、原形不定詞補文は容認されない。そのため、補文主語が無生物主語の場合静止している瞬間を捉える現在分詞の選択が義務的になるという。本発表では、このような PDEでは容認されない表現が通時的にどれほど散見されるかを中心に、EEBO を用いて知覚動詞補文に出現する準動詞のアスペクト特性はEModE 以降発現し、LModE 以降確立したと主張する。


参考文献
江川泰一郎.(19913)『英文法解説 改訂三版』東京:金子書房.
吉良文孝.(2018)『ことばを彩る1 テンス・アスペクト』東京:開拓会.
Kirsner, R, S. and Thompson, S, A.(1976)‟The role of pragmatic inference in semantics: a study of sensory verb complements in English”. Glossa 10.2, pp. 200-40.
森田義彦.(2007)『欽定訳聖書の動詞研究』東京:あるむ.
Stewart, A, H.(1976)‟The Development of the Verb-Phrase Complement with Verbs of Physical Perception in English: Historical Linguistics as a Source of Deep Structures.” Journal of English Linguistics, Volume 10. 1. pp. 34-48



2. Constructions of Directive Performative Verbs in Middle English
   -With a Focus on Troilus and Criseyde, The York Plays, and The Paston Letters-
                                                                        泉類 尚貴(慶應義塾大学大学院)

中英語期(1100~1500年)は、英語史において、現代的なポライトネスが萌芽した時期として重要である。ポライトネスは、指令表現の分析をすることでその一部を明らかにできる。本発表では、指令表現のうち、特に明示的遂行文の形式に注目する。コーパスは、PPCME2ならびにHelsinki Corpusの中英語期をカバーする部分、PCEECに収録されているCelyStonerPastonの部分を利用する。加えて、発表者の構築している中英語のDrama、Chaucerのコーパスを用いる。
 これらの資料を中心に使用して、次の3点を中心に検討する。1点目は、中英語期の行為指示を表す遂行動詞の抽出である。2点目は、Brown and Gilman(1989)がShakespeareを対象にして標本調査を行った、遂行動詞と、2人称代名詞(T/Y)の構文関係について調査する。最後に、Rohdenburg(1995)が近代英語期を対象にして示唆した、動詞における補文とcoercive forceの関係性について述べる。なお、2点目と3点目の調査には、パイロット・スタディとして、ジャンル間の差異に注目するために、Troilus and Criseyde(韻文ロマンス), The Paston Letters(書簡集), The York Plays(劇)を中心に扱う予定である。


3. 言語変化は本当にSカーブか:PPCMBE2からの検証
                                                                        塚本 聡(日本大学) 


言語変化は一般にロジスティック関数のSカーブを描くといわれている(Denison 2003他)。変化の初期は当該項目の生起数は少ないが徐々に増加し、ある時期から一定の増加となり、変化の完了期には再び増加が減少し、変化が完了する。しばしば言及されるdoの変化ではSカーブを描いているように見える(Ellegård 1953)。しかし、すべての変化がこのようなSカーブを描いているわけではない。たとえばbesidesの前置詞用法についての頻度を示すLindquist (2009: 179)では1950年代に、頻度が激減し、そのままの頻度を保っている。
 本研究は、Penn Parsed Corpus of Modern British English (PPCMBE2)を使用し、語、品詞、句レベルの増減の変化の割合に着目し、言語変化の速度の特徴を明らかにすることを目的とする。具体的には、本コーパスに付与されたアノテーションのPOS tagおよびSyntactic tagに着目し、コーパスがカバーする200年間で変化が開始または終了する変化の10年単位での変化率を観察した。これらの項目を観察すると、変化の初期でもかなりの生起数の変化がみられ、Sカーブで特徴的な漸次的な変化とはならず、むしろ変化初期から生起数の急増する例がみられる。このことから、変化には一定の初速度が必要とみられることを示す。

参考文献
Denison, David. (2003) “Log(ist)ic and simplistic S-Curves,” in Hickey, Raymond ed. Motives for Language Changes. Cambridge University Press, 54-69.
Ellegård, Alvar. (1953) The Auxiliary Do: The Establishment and Regulation of Its Use in English. Stockholm: Almqvist & Wiksell.
Kroch, Anthony, Beatrice Santorini, and Ariel Diertani. (2016) The Penn Parsed Corpus of Modern British English (PPCMBE2). Department of Linguistics, University of Pennsylvania. CD-ROM, second edition, release 1 (http://www.ling.upenn.edu/ppche-release-2016/PPCMBE2-RELEASE-1).
Lindquist, Hans. (2009) Corpus Linguistics and the Description of English. Edinburgh University Press.

2020年度研究大会(2021年3月27日)

2020年度研究大会  英語コーパス学会SIG「コーパスと言語変異研究会」


英語コーパス学会SIG「コーパスと言語変異研究会」は以下の通り、2020年度研究会をZoomによりオンライン開催します。参加希望の方は以下のフォームにより、2021年3月20日までに必ず事前登録をお願いします (ZoomのURLを申込者に知らせ、会議中はロックをかけます)。


日時:2021年3月27日(土)13:00-15:30

場所:Zoomによるオンライン開催

参加申し込みフォームはここです


プログラム

13:00-13:10 開会式

13:15-13:45 「知覚動詞補文に出現する準動詞がもつアスペクト特性の発現時期について」 

                                                                        村岡 宗一郎(日本大学大学院)

13:50-14:20 "Constructions of Directive Performative Verbs in Middle English -With a Focus on Troilus and Criseyde, The York Plays, and The Paston Letters-"
                                                                        泉類 尚貴(慶應義塾大学院)

14:25-14:55 「言語変化は本当にSカーブか:PPCMBE2からの検証」
                                                                        塚本 聡(日本大学)

15:05-15:30(予定) SIG運営、研究等についての意見・情報交換(SIGメンバー限定)

        

                                                                                                                        以上